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茶の湯の宇宙
茶の湯の宇宙
小堀 宗実
(朝日新書)

「茶の湯が大切にしてきた心のあり方や美意識を、
できるだけ親しみやすい形で」 伝える入門書。

とても平易なことばでつづられていますので
お茶の世界にふれたことのないかたには
その入口に立って中をのぞいてみるような
新鮮な楽しさのある一冊かと思います。

たとえば、茶の湯の心得として有名な
「利休七則」 について触れた項があります。

「利休七則」 というのは、非常にシンプル。

 茶は服のよきように
 炭は湯の沸くように
 夏は涼しく冬は暖かに
 花は野にあるように
 刻限は早めに
 降らずとも雨の用意
 相客(あいきゃく;招く客の組合せ)に心せよ

… といった、まさに “基本のき” の内容なのですが
これが、とくにお茶事の本番となると
すべてに心を配ることはしごく難しいのです。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
 これらを聞いたある茶人が
 「それなら、誰でも知っていることです」 と言うと、
 利休は、「これらのことがすべてできたなら、
 私はあなたの弟子になりましょう」 と答えたといいます。

 「利休七則」 は、誰もがわかっていることを、
 自然に行えることの奥深さを説くのと同時に、
 知識として知っていることと、それが実践できることとは
 まったく違うのだという教えでもあります。
 言い換えれば、誰でもわかっていることを、
 当たり前にできるようになることこそが、
 もてなしの真髄なのだといえます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  

お点前をなぞって、型の再現をするだけが茶の湯ではない。
そうしたあたり前のことを、再確認させていただきました。

著者の小堀宗実氏は
大名茶人の小堀遠州を流祖とする遠州流のお家元ですが
型などの差異以前に、どの流儀であっても変わらない
その礎となる心のありようを思い出させてくれる
初心に立ち返れるという意味でも貴重な一冊かと思います。
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風邪、そしてインフルエンザの流行が全国的に拡大しているとか。
静岡県でも、とくに県西部を中心に
インフルエンザによる学級閉鎖が増えているとの報がありました。
皆さま、どうぞご自愛くださいませ。

手洗い、うがい、部屋の加湿、マスク着用などの対策にくわえ
これも大切なことなのに忘れがちになるな、と思った事柄が
この記事のなかにありました。

→ 「【三重】 インフルエンザ : 流行、拡大中
   名張の小中出席停止、前年の4倍超 伊賀で学年閉鎖12件」
   (毎日新聞 2012/01/26)

入試を控えた、名張市の学習塾では
インフルエンザ予防のための対策のひとつとして

「休み時間には、電気ポットで沸かした温かいお茶を配って
 乾燥した喉を潤すよう呼び掛けている」

のだそうです。

のどの粘膜の乾燥は、ウィルスの感染、増殖をまねくといいます。

ただでさえ冬場は空気が乾燥しているのみならず
気温が低いためにさほど汗をかかないですから
案外、水分補給がおろそかになりがちかもしれませんね。

この学習塾では温かいお茶を飲用しているとのことで
これは、茶カテキンの抗菌作用を期待してのことかもしれません。

ただし、もちろんお茶は薬ではなく一食品ですから
その効果を期待するというよりは、あくまでのどを潤す機会として
こまめに日ごろの水分補給を心がけてみてはいかがでしょうか。

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201201250807000.jpg
宝泉堂(京都市)製 「千代木」
 
京都といえば、そば粉を用いたそばぼうろが有名ですが
小麦粉の生地でかりっと焼いたぼうろにも
お茶事にかなう質実な風味とデザインのものがさまざまあります。

小麦粉生地のぼうろには、なぜか
縁起のよい松葉をかたどったものが少なくないですね。
宝泉堂さんの 「千代木」 も、そのひとつ。
銘の千代木は、松の異名です。

拍子木のようなシンプルな長方形のぼうろを二本束ねた薄紙が
さりげないけれども素敵です。
緑色の松葉の絵に、「まつば」 の文字が小さく添えられて。

かっちりと焼きしめられているため、歯ざわりは堅め。
しかし、ざくっと噛んだあとの口どけは、ふうわりと。

枯淡な風味は、抹茶 のみならず
煎茶ほうじ茶 、それから意外とコーヒーにも合うのでは。

201201250918000.jpg

缶の大胆な配色も印象的なのです。
千代木の銘の部分は、きれいにはがれるシールです。

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雛を包む
雛を包む
有吉 玉青
(平凡社)

和紙のさわさわと柔和な音が聞えてきそうなタイトルと
折形の写真が用いられたカバーの質感も印象的な一冊。

有吉さんには、茶の湯のお稽古のこもごもを綴った
名エッセイ 『お茶席の冒険』 がありますが
こちらの 『雛を包む』 は、お茶席のことばかりに限らず
さまざまの日本的なるものに想いを寄せたエッセイが
37篇、おさめられています。

雑誌や新聞などに掲載されたものが集められているため
文体や、語り調子の硬さなどが一貫していないのが
ときに流れを緩慢に感じさせて唯一の残念ではあるものの。

一篇ごとに、身近のさまざまなものへのやわらかな気づきを
その慧眼をとおして見せてくれます。

茶の湯以外のお茶まわりで印象に残ったエピソードは
「終わらぬ夜」 という一篇の、さる料亭での食事のひと幕。
水菓子までひととおり食べ終えたあと、著者はふと気づきます。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
 お茶を熱いものと替えていただいて気づいたことには、
 お茶碗の地模様の縞が茶色い。
 さっきまでのお茶碗は青い縞だった。
 その前は赤いお茶碗。
 さらに前は赤絵のお茶碗。
 ぼんやりしていて、今ごろいつも違う柄だったことに気づいたが、
 それでもすべての柄を覚えている。
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実になにげないのだけれども、示唆的な話だなあ、と感じます。

出されるたびにお茶碗が違っているということ。
これは、高級料亭ならではの
客への贅沢なサービス、眼の愉しみというだけの話にとどまらず。

先ほどと一見して趣の異なる器で出すということは、つまり
新しい清潔な茶碗にきちんと取り替えて
あらためて淹れたお茶が出されたことへの、暗黙の了解でもあり。

(自分が客人をもてなす際にも留意したいことでもありますね)

おいしい料理に集中するあまり、あるいは緊張感のあまり
はたまた、仲居さんがこともなげに
「さりげなくひそやかに」 心配りして淡々と動いてくれるほど
そんな小さな変化に全く気づけない場合もあるけれども。

だからこそ、相手の思いをさりげなく汲む楽しさも存在するわけで
そんな細やかなところに心を向けることのできる著者の感性を
とても眩しく感じました。
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お茶のことのは ●  花茶(はなちゃ)

  花薫茶(かくんちゃ)のこと。
  また、一般にジャスミン茶のことをいう場合が多い。
           ― 緑茶の事典 改訂3版(柴田書店)より  ―

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  

茶葉の性質に、においを吸着しやすいという点があります。
いったん開封した茶葉をおいしい状態で使い切るためには
きちんと密閉できる袋や缶に入れることはもちろんのこと
においの強いもののそばに置くことはタブーなのですが。

そんな性質を逆に利用したのが 「着香茶(ちゃっこうちゃ)」 。
文字どおり、香りをつけたお茶のことです。
植物性の香りをお茶に加えた 「着香茶」 の有名選手といえば
紅茶にベルガモットの香油を吹きつけたアールグレイでしょうか。

中国茶の、ジャスミン茶に代表される花茶も
その代表的な一種といえます。
「花薫茶」 、「花香茶(かこうちゃ)」 ともいいますけれども
その名のごとく、茶葉に花の香りをプラスしたもののことです。

『緑茶の事典』 の 「花香茶」 の項には

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
 台湾で生産した
 下級の包種茶(ほうしゅちゃ;半発酵茶の一種)を
 中国福建省に運んで花薫した茶を
 花香茶と呼んだことがある。
 ジャスミン茶(茉莉花茶)が代表的。
 原料茶は紅茶、ウーロン茶、緑茶類である。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  

との解説もありました。

風味のあまり芳しくない下級茶をおいしく飲むための知恵として
もともと花茶は生まれたのかもしれませんね。

さて、花茶といえば、昨今ではこちらも。

201201231414000.jpg

お湯を注ぐと花の形となって広がる、見目うるわしい工芸茶。
こちらは、ジャスミンの花の香りをまとった中国緑茶と
芯の部分には千日紅があしらわれています。
これも花茶の一種として好まれるものですね。

中国茶の専門店ばかりでなく
輸入食材店や、無印良品などの有名雑貨店でも
気軽に求められるようになりました。

香りやかたちの華やぎは、今や下級茶の化粧の手段を超え
さまざまある茶飲料の選択肢のひとつとして
おもてなしのお茶としても、私たちを愉しませてくれます。

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