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  • 2016.03.31 Thursday

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『箱は語る ― 茶の湯情報学ことはじめ』
於 ・ サンリツ服部美術館 (長野県諏訪市)
2012年9月25日(火)〜12月9日(日)

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工芸の優品を多く蔵することで知られる、諏訪湖畔のサンリツ服部美術館。
現在は茶道具の 「箱」 に注目した展覧会が開催されています。 

一見、素っ気ない木製の箱にみえて
そこ書きつけられた文字情報は、その道具が今日に至るまで
どんな旅路をたどってきたかがわかる履歴書のようなもの。

また、仕覆(しふく;茶入などを仕舞うための袋)や
挽家(ひきや;仕覆に入れた茶入をおさめるための木製の器)
あるいは所属の文書といった付属品の数々からは
それを手にした者たちの道具への愛情のみならず
嗜好性などもうかがい知ることができます。

ただ、茶事などでは、道具そのものを鑑賞はしても
箱まで目にすることはまれ。
茶道具の展覧会で、そうしたものを展示する例もありますが
それも、すべてではなく、見どころのある一部のものに限られてしまい
なかなか全貌を拝見できる機会はありません。

今展では、国宝の白楽茶碗 銘 不二山や
唐物茶入の名品、紹鷗茄子をはじめ
それらの箱と付属品までたっぷりと楽しめます。

不二山は、サンリツ服部美術館の所蔵品の白眉。
ほんとうに、またとない、えもいわれぬ清冽な趣の一碗で
常設展示ではないこともあり、今回久しぶりの拝見がかないました。
美術館の所蔵品紹介のページ に画像が掲載されています)

本阿弥光悦の手によるこの茶碗。
うつわの作り手自らが箱に書き付けをする 「共箱(ともばこ)」 では
日本工芸史上初のものといわれるとか。
箱蓋に 「不二山」 としたためた書もまた、颯爽と美しい。

また、このうつわは嫁ぐ娘に持たせたとの伝えがあり
娘の振袖から仕立て直したという包み裂(ぎれ)も観ることができました。

ところで、同じく茶碗で、箱の大きさという点で驚かされたのが
樂家初代 長次郎作の黒楽 銘 雁取(がんどり)。

諸家に渡り、数寄者として有名な井上馨も手にしたという来歴の持ち主は
なんと七重の箱におさめられていました。

所有者が変わると、さらにひと回り大きな箱を仕立てて
箱ごと入れ子の状態にして所有されることも多いため
小さなお道具が、驚くべきサイズの外箱に入っている場合もあるんですね。

七つ目の箱はかなり大ぶりで、抱え持つほどの大きさ。
製茶関係のかたには、乾燥茶葉で20kg、いや30kgは入るサイズというと
その大きさがイメージできるでしょうか。

道具の見事さのみならず、それを大切に所有してきた多くの人々の
熱い想いをも伝わってくる、稀有な機会。
道具だけの展示ではみえないものを、たくさん感じてみてください。
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『フィンランドのくらしとデザイン ― ムーミンが住む森の生活』
於 ・ 静岡市美術館 (静岡県静岡市葵区)
2012年9月1日(土)〜10月8日(月・祝)

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ビルのエスカレーターを上がったエントランスでは
ムーミンと、マリメッコのウニッコ(けしの花)柄がお出迎え。

静岡市美術館は、こうした演出でもいつも楽しませてくれます。
現在は、全国5会場を巡回中のフィンランド展が開催中。
静岡は3番目で、こののち長崎と兵庫に巡回予定とのことです。

マリメッコのテキスタイルをはじめ
食器や家具等、すぐれたプロダクトデザインの数々。
さらに今展では、トーヴェ・ヤンソンの 『ムーミン』 の原画や
民族叙事詩 『カレワラ』 にまつわる展示もあり
その風土に培われた精神性にまでふれられる好機会となっています。

フィンランドを代表する画家たちの作品は
国内では意外や、あまり観る機会がありませんけれども
個人的には今回、ペッカ・ハロネンや
アクセリ・ガレン=カレラの風景画が拝見でき嬉しかったです。

シンプルな風景描写でありながら
不思議と茶味を感じさせるものが多いのです。
雪や水面の、静謐な白にみる多様がことに心地よく
木製がたいていの純朴な額装との調和も、一見の価値があります。

お茶まわりのものでは、カイ・フランクの食器。
陶磁の食器シリーズ 「ティーマ」 や、ガラス器の 「カルティオ」 は
日本でも多くのインテリアショップで目にする人気の品ですが
それらプロダクトの現行品のみならず
オリジナルのモデルもいろいろと拝見できました。

シンプルなデザインで、プレートやグラスはスタッキングも容易。
求めやすい価格設定かつ、モデルが変わらぬかぎり買い増しがきき
色のバリエーションで遊び心を取り入れられる、彼の器。
用の美、ということばを思い出します。

あらためて、タンブラーの現行品など
ガラスケースのなかに初期作とともに並ぶのを観ると
フォルムにしろ色の加減にしろ、清潔な美しさがありますね。
贈答用パッケージもまた素敵。

新生活をはじめる人へのプレゼントにしたり
数茶碗のように、来客用にいくつか揃えておくのもいいなと思いました。

この会期中は、月曜も 「トークフリーデー」 として開館しているとのこと。
また、ショップでは関連書籍や布物、器もいくつか販売されています。
気軽に足をはこんでみてはいかがでしょうか。
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『作陶100年記念 バーナード・リーチ展』
於 ・ 日本民藝館(東京都目黒区駒場)
2012年6月19日(火)〜8月26日(日)
※ 2013年9月〜11月に 豊田市民芸館 に巡回予定。

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今年は、バーナード・リーチの生誕125年にして
また作陶100年を数えるそうで
そういえば高島屋の各店でも
今月末からの日本橋を皮切りとして展覧会が開かれるとか。

さて、若くして日本の民陶に魅せられ
自ら作陶活動などをするとともに
各地の職人と交流し、デザインや技法を教えたりと影響しあう、等
一連の民藝運動における中心人物のひとりとして
語られることの多いリーチ。

今回、彼の手の仕事を展観して強く感じたのが
一見、大らかで温柔、てらいのない作品群にみえて
内奥に、ぱっと目を惹く向心力がひそんでいるというか。

とくに、うつわや陶板に描かれた絵付や
あわせて紹介されている数々のスケッチ。
ラフなタッチのものも多いのですが
しかしながら、描く対象の芯なるものをその直観で抽出し
しかも闊達に表現しうる筆力を感じました。

この日、戸栗美術館の初期伊万里展 の次に訪れたのですが
画の活き活きとしたさまが圧巻の、初期伊万里を拝見直後の眼にも
凌駕する勢いで迫るものがあり。

また、今展で拝見したものの多くは
5年前に汐留ミュージアムで開催された
リーチ生誕120年の記念展にも出品されていたものの
やはり、暮らしと親和する日本民藝館の空間で
彼自身が手がけた家具などと並ぶ姿は
生活芸術を体感できる、という点でも格別と感じました。

文言による説明もほとんど排除されたこの空間は
鑑賞者の、ただ器物を観る力、ということにくわえて
外面ではない真に暮らすことの豊かさのもちようを
試されているようでもあります。

日本民藝館所蔵 バーナード・リーチ作品集
日本民藝館所蔵 バーナード・リーチ作品集
(筑摩書房)

図録は筑摩書房から刊行されています。
会場では市価よりすこしお安くなっていました。

掲載写真は、無背景のブツ撮りといった感じではなく
民藝館にて、イギリスの古家具などとともに撮影されていて
本に流れる器物の生気や、空間の空気も愉しめます。
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『初期伊万里展 − 日本磁器のはじまり −』
於 ・ 戸栗美術館 (東京都渋谷区)
2012年6月10日(日)〜9月23日(日)

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松濤の閑静な住宅街にたたずむ古陶磁専門美術館で
現在は 「初期伊万里」 を紹介する展示が開催中です。

伊万里焼は、現在の佐賀県有田のあたりを中心に生産され
伊万里港から各地へとはこばれたうつわのこと。

なかでも 「初期伊万里」 というと
磁器生産の草創期である17世紀はじめから
色絵磁器が登場するなどして技術革新の進む前までの
おおよそ1640年代ごろまでのものをさすそうです。

素地も釉薬も、ぽってりと厚めのものが多く
生掛けによる釉のムラや、陶工の指あと、歪みなどもみられます。
技術的にはまだまだこれからといった時代なのですが
そのアンバランスななかにみえる手肌のぬくもりのようなものが
妙に惹きつけるんですよね。

定型化していない文様も、また胎動期ならではで
中国の絵画や磁器の文様に倣ったものが多いようですが
のびのびと大らか、闊達で心躍ります。

描きこみすぎない染付は
呉須の高価さも一因だったのでしょうけれど
しかし余白のうみだす詩情に心ひかれるものが多々あり
画工の筆に力の漲っていた時代と、あらためて感じました。

今回の企画展はまた、大作や、文雅な青磁の作例などもまじえ
単に黎明期の素朴美というにとどまらない
初期伊万里の奥行にふれられるラインナップとなっています。
くわえて、茶道具も拝見できました。

日用の食器の印象が強い伊万里ですが
初期の頃には、茶事に用いる茶碗や水指(みずさし)、茶入なども
比較的よく焼かれています。

とくに、水指に優品が多いんですね。
天津桃の実をかたどったような見込みの形がユニークな
《染付 松竹梅文 桃形水指》 や
白磁染付にくわえ鉄釉も用い、飛びかんなや陰刻までほどこした
技巧的かつ非常に趣味的な 《銹釉染付 松竹梅文 水指》 など。

つるんとした磁肌で、水染みによるカビの心配もなく、堅牢で。
白色と青色系で目にも清涼感があり
いかにも水に添う印象のある、国産の磁器の水指。

そういえば、ちょうど 「きれいさび」 の茶が好まれた時代でもあり。
美しさや洒脱さと、実用的な扱いやすさの同居が
かの時代の茶人たちの心をとらえたことは想像にかたくありません。

残暑きびしきおりに、涼を感じられる展示、でもあると思います。

戸栗美術館で磁器を鑑賞する魅力は、なんといっても
うつわとの対話にひたれる、館内の静謐さ。
くわえて、磁肌のしっとりと映える
ライトの過剰な反射などのストレスがない照明環境も特筆かと。
朝ぼらけの茶室で、自然光で拝見する感覚にも近く感じました。
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『七夕の美術 ― 日本近世・近代の美術工芸にみる』
於 ・ 静岡市美術館 (静岡県静岡市葵区)
2012年6月23日(土)〜8月19日(日)

※ 前期 6月23日〜7月22日、後期 7月24日〜8月19日

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近世・近代を中心とする、さまざまな絵画・工芸。
さらには、京都の冷泉家に平安の昔から伝わる
「乞巧奠(きっこうでん)」 の祭壇しつらえ等をとおして
七夕にちなむ習俗や儀礼などをひもとく企画展が
いま、静岡市美術館で開催されています。

今年の七夕は、新暦ではもう過ぎてしまいましたけれども
陰暦でいいますと来月8月24日にあたります。

星まつりでもある七夕は
梅雨がとうに過ぎ去り、晴天の日が多い晩夏に祝われてきました。
ちょうど、秋のおとずれを心待ちにするころですね。

出品されているなかには、そんな時節をうかがわせるものも多く
たとえば展示室入ってすぐ、前期のみの展示となる
《帷子(かたびら)白麻地七夕文様》 には
短冊などが飾られた、しなやかな笹竹とともに
秋の七草のひとつ、萩の花の文様が瀟洒に染められています。
これが実に優麗でした。

萩の花といえば、なんでも毎年 「七夕花扇」 といって
萩をはじめ、桔梗や撫子など初秋の草花を扇状にまとめた飾り物が
近衛家から宮中に献上される習わしもあったそうです。
その、届ける道中の様子を描いた絵画や
あわせて花扇の復元品も展示されていました。

しかし植物で、七夕にちなむ絵画に多く描かれているものといえば
やはり笹の葉、それから梶の葉でしょう。

笹の葉は今日、全国的に定番となっていますものの
京で七夕のしつらいによく用いられる梶の葉は
関東方面ではそれほど馴染みがないんですよね。

茶の湯でも、たとえば裏千家には葉蓋(はぶた)といって
水指(みずさし)の蓋のかわりに植物の葉を用いる
目にも涼やかな夏場のお点前があって
七夕の趣向の茶事ですと、ほぼ決まって梶の葉を使用しますが。
どうして梶の葉なのか、その由来なども
展示をとおして明快に知ることができますよ。

梶の葉にかぎらず、京と関東(近世の江戸)にみる
しつらえのさまざまな差異も明らかにされていて面白いのです。

たらいの水面に映った星影に、技芸の上達を祈る京と
願いをしたためた短冊を、より天高く風に翻す江戸と…。
浮世絵などに描かれる、二星に願いをこめる街角の情景にも
ずいぶんと違いがあって驚かされます。

また、農事と密接という点で興味深かったのが
年占や豊作祈願としての相撲神事についての言及。

『日本書紀』 に記述のみえる、日本初のいわば天覧相撲。
野見宿禰(のみのすくね)と当麻蹴速(たいまのけはや)、勇士2人が
大和ではじめて相撲をとったのが7月7日ということで
そののち、平安期まで行われた宮中儀式 「相撲節会」 も
七夕と結びつき、この日に催されることが多かったとか。

ようやっと厳しい夏が終わり、実りの季節を迎えようという時分。
灼ける太陽ではなく、涼やかな星に収穫の無事を占うのは
自然の成り立ちとも思えます。

7月7日という、たった一日のなかに
いかにさまざまな風習や願いや物語がこめられているかを
多面的に知ることのできる、出色の展覧会でした。
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『開館30周年記念特別展
 国際観光温泉文化都市 熱海ゆかりの名宝
 ― 学校の先生と学芸員がつくった展覧会 ―』
於 ・ MOA美術館 (静岡県熱海市)
2012年7月14日(土)〜9月3日(月)

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開館30年を迎えた、熱海のMOA美術館にて
地元ゆかりの名宝が一堂に会する企画展が開かれています。

中世〜近代の熱海にまつわる文化財約65点が拝見できます。

さて、熱海といえばなんといっても古くからの温泉地。
1300年の昔からこんこんと湧き出している
横穴式の洞窟源泉 「走り湯」 は
源頼朝が尊崇したことでも知られる伊豆山(いずさん)神社の
ご神湯でもあります。

この展覧会には、温泉地熱海を愛した文化人ゆかりの品なども
多く出品されているのですが
“お茶まわり” でとくに必見なのは
千利休がこの地で入湯したことを記している自筆の書状でしょう。

天正18年、秀吉の小田原攻めに随行した利休。
そのさい、古田織部と同道し、熱海の湯につかったことを
羽柴下総介滝川雄利宛の礼状のなかで話題にしています。

そういえば、漫画 『へうげもの 7服』 にも
ふたりが湯治をするシーンが描かれていますけれども
実際、あのような時勢のなか
湯につかり、「あたミの洞の露」 がしたたるのを見ながら
彼らはどんな会話をしたのでしょうか。
淡白な文面だけに、想像のふくらむ書状です。

ちなみにこれ、現在はMOA美術館の所蔵品となっていますが
かつては近代数寄者、松永耳庵の旧蔵であったそうですよ。

もちろんほかにも見どころは多くて
なかでも白眉なのが、伊豆山神社ゆかりの神像。
四柱、拝見できるのですが
なかでも像高2メートル超、国内最大の神像とされる
平安中期作の 《男神立像》 は魅力的でした。

面相部をのぞく体躯全体が桂材の一木造とのことで
居丈高ではなく、しかし伊豆山の風情のごとくなにか朗々と。
朝服でキュッと正装しているのも独特で
なにより、彩色がわりとしっとりとした風情で残っていて驚きました。
図録の解説文によれば
「永い間白布に巻かれた状態で厨子に祀られていたため」 に
剥落が抑えられたようです。

今回、夏休み期間にあわせての企画ということもあってでしょうか
通常のキャプションにくわえ
子ども向けのわかりやすい作品解説パネルも
すべての展示品に添えられています。
なんでもそちらは、地元の学校の先生方によるものとか。

お子さま連れでも気軽に足を運んでみてくださいね。
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特集陳列 「東洋の青磁」
於 ・ 東京国立博物館 本館14室 (東京・上野)
2012年5月15日(火)〜7月29日(日)

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キャラクター 「トーハクくん」 と 「ユリノキちゃん」 に
「東 博(あずま ひろし)」 と 「ノキ ユリ」 という本名があると知り
軽く驚いた、先日の東京国立博物館訪問でしたが。

開館140周年となるという今年は
本館の常設展示がいっそう充実していて
現在の特集陳列 「東洋の青磁」 が、また素晴らしかったです。

ひと口に青磁といっても、色味も艶の呈しかたもさまざまです。
古くは3世紀の古越州(こえっしゅう)から
18世紀江戸中期ごろの鍋島まで。
代表的な時代・地域・作例で構成された28点からなる
眼福の展示となっています。

※以下、緑字の箇所は
 東博ホームページの 「名品ギャラリー」 へリンクしています。

いずれも名品ですが、なかでも惹きこまれたのは
中国・南宋官窯の 《 青磁輪花(りんか)鉢 》 。

全面に走る二重貫入(かんにゅう;釉面にあらわれるひび)の醸す
奥深い静けさと、崇高さがこの上ない鉢です。
繊細肉薄なさまが、職人の手の気配をまったく感じさせず
器の口縁がひかえめな輪花状になっていることもあって
まるで、陽光に向かって首をかしげる花びらのごとく超然と。
胎土の造作あってこその美とも感じました。

茶陶では、中国・龍泉窯(りゅうせんよう)の
青磁茶碗 銘 馬蝗絆(ばこうはん) 》 が拝見できます。

将軍足利義政が所持していたおり、ひび割れが生じたために
中国に送って同じような代替品を求めたものの
もうつくられていないからと、ひびを鉄の鎹(かすがい)で止めて
送り返してきたというエピソードのある一碗。

歴史の教科書か資料集に載っていたような気もしますけれども
そういった写真では、どうしてもその鎹に目がいってしまいがちで
(目立つアングルで撮影するという事情もあるのでしょう)
器物そのものの美しさにまで思いをいたせないところがありますが。
今回、砧手の気品と抑制味ある艶、素地のたおやかな均整美 …
見込の優麗さに、ため息がもれました。

アルカンシエール美術財団蔵の国宝
南宋の《青磁下蕪(しもかぶら)瓶》 が出品されていることも特筆。
また、高麗青磁は5件拝見できます。

フェルメールの名画の来日などでも話題の上野公園エリアですが
明日からの三連休、近くに足を運ぶというかたは
ぜひ国立博物館にも立ち寄ってみてくださいね。

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『石洞山人(せきどうさんじん)とやきもの』
於 ・ 石洞美術館 (東京・千住大橋)
2012年4月28日(土)〜8月5日(日)

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六角形のふたつの建物が並び立つ、印象的な外観。

千住金属工業株式会社の本社ビルのなかに
社長、会長を歴任した佐藤千壽(せんじゅ)氏の築いた
個人コレクションをおもに紹介する美術館があります。

十代後半の学生時代に
小ぶりで簡素、どこかはかなげな高麗青磁の碗と出会い
魅せられてしまい、思いきって購入したのが
美術品蒐集のはじまりだったとか。

佐藤青年に古美術との蜜月をもたらした、その一碗をはじめ
今展では、爾来60年あまりのコレクションのなかから
80余件が紹介されています。

展示室に入ってまず、その多彩さに驚かされます。
日本、中国、朝鮮、ベトナム、タイなどアジア各国のほか
オランダのデルフトや、スペインのイスパノ・モレスクも。
洋の東西や年代ジャンル問わず、多様なやきものが並びます。

さて、“お茶まわり” での白眉はなんといっても
140件を超えるという古染付のコレクション。

中国明代末期、日本では江戸初期にあたるわずかな期間に
おもに日本の茶人の注文に応じて焼かれたといわれる
独特の、大らかでどこか親しみやすい風情をもつ染付です。
今展でも、茶入や茶碗、向付といった
茶事に欠かせないお道具を中心に十数件が拝見できます。

そのほかには、江戸後期の仁阿弥道八の手による
狸をかたどった楽焼飴釉の小さな香合も、実に飄逸。
仰いだ天には月影がみえるのでしょうか。
夜長の独服、あるいは独酌のさいにも
対話の愉しみをもたらしてくれそうな佳品でした。

茶とはあまり関係がないのですが
イギリスのスリップウェアの角皿にも、妙に惹かれました。
民藝館の展示で一番に人目を惹くような
いわゆる名品中の名品というわけではないものの
一筆書きのナマコみたいな、化粧土のラフな文様も楽しげで。

美術館サイトの所蔵品のページ にも如実なように
佐藤氏のコレクションには
生活のなかで座右の友としたであろう親近感が一貫していて
展示を観ていると、自然とほころんできます。

氏が愛したやきものの数々を通じて
その人とも出会えたような、あたたかな体験となりました。
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『夏季収蔵品展  美を愛でる、京を愉しむ』
於 ・ 細見美術館 (京都)
2012年5月19日(土)〜7月8日(日)

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平安神宮そばの細見美術館でひらかれている、所蔵品展。

洛中洛外を描いた名所絵や
若冲や応挙、雪佳ら、京都にゆかりの絵師。
そして、古歌や物語にみえる王朝の優雅。
三章立てで、京にまつわる多彩な絵画・工芸を紹介しています。

お茶まわりで、非常に興味深かった一品が
17世紀初頭に描かれた 《北野社頭図屏風》 という屏風。
美術館サイトに所蔵品の画像が紹介されていないのが残念ですが。

天満宮の境内の風物といえば、梅花が思い出されますけれども
この屏風には、ひとつの画面のなかに桜花も描かれており
御目出度い、かつ華やかな印象を受けます。

その満開の桜の下で、盛大に酒宴をもよおす男女の姿。
かたわらには、袖引きをしている様子までみえます。
ご神域なのに … と思ってしまうのは、現代人の硬さでしょうか。

爛漫の、遊興の場、出逢いの場としての北野が描かれ
登場するひとりひとりの表情を覗くほどに
歓楽街のにぎわいをみるようで愉しいのです。

門前のほうに目をやれば
日よけの野点傘(のだてがさ)を立てて、お茶を楽しむ人々も。
茶碗や茶筅、柄杓、風炉なども細かく描きこまれています。

立ち寄る男性客たちは、実はお茶そのものよりも
そこにいる看板娘が目あてだったりして … 。
今でも寺社の門前や参道には茶店がつきものですが
その原形をみる思いもします。

ちなみにこの屏風、もともとは
東京国立博物館蔵の 《四条河原図屏風》 と
対をなしていたものだそうですよ。

いつか、一双が並んだところを観てみたいものです。
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『開館30周年記念所蔵名品展
絢爛豪華 岩佐又兵衛絵巻 郡 堀江物語』
於 ・ MOA美術館 (静岡県熱海市)
2012年5月11日(金)〜6月5日(火)

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岩佐又兵衛勝以(いわさまたべえかつもち)筆といわれる
MOA美術館所蔵の、豪奢な絵巻群のうち
現在は 《堀江物語絵巻》 全12巻が紹介されています。

下野の豪族、堀江家をおそった悲しき没落と
仇討ち・再興の物語。

人気のある絵巻だったのでしょう。
残欠本もいくつか伝世しているそうですが
完結した物語として伝わるのは、MOA本のみとのこと。

展示空間は、ただもう堀江物語の世界。
ほんの一部、関連作品・資料や
野々村仁清の 《色絵藤花文茶壺》 が置かれている以外は
2階の広い展示室のすべてをこの絵巻のためにあてていて
非常にぜいたくで濃密な空間となっています。

それでも、スペースの都合上でしょうか
残念ながら全場面の公開ではなく
巻によっては、一部が割愛されていたりするのですが
とはいえ、充分に筋の追える範囲ですし
また、壁面のパネルに場面の説明が簡単に付されています。

さて、絵巻は、浄瑠璃の詞(ことば)書きにそった場面展開で
浄瑠璃の一節と、絵が、きっちり交互にあらわれます。
その折りめの正しさゆえか、浄瑠璃のもつリズム感ゆえか
物語の運びも律動的で、簡明な印象も受けました。

和綴じ本のように、ページのサイズに制約されない
絵師の意図でどこまでもワイドにできる、絵巻の横長の画面は
大勢の人物が描きこまれるシーン、たとえば
牛車の行列だったり、戦場だったりに迫力が増して
映像作品の群像劇のロングショットに通じる面白みを感じました。

また、個人的に面白く感じたのが
膳に美しく並べられた、豪華な饗応の数々や
屏風絵や襖絵、床飾りといった調度類の細かな描きこみ。
病に伏せる主人のそばで風炉(ふろ)に炭をくべる人がいたり
その傍らに、天目台に載った碗があったりと
さまざまな小さな発見がありました。

そのため、拝見に時間を要しましたが
この絵巻を愛玩した貴人も、そんなふうに
なめるように少しずつ味わったのかなあ、などと
遠い昔に思いをはせるのも愉しい時間となりました。
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