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雛を包む
雛を包む
有吉 玉青
(平凡社)

和紙のさわさわと柔和な音が聞えてきそうなタイトルと
折形の写真が用いられたカバーの質感も印象的な一冊。

有吉さんには、茶の湯のお稽古のこもごもを綴った
名エッセイ 『お茶席の冒険』 がありますが
こちらの 『雛を包む』 は、お茶席のことばかりに限らず
さまざまの日本的なるものに想いを寄せたエッセイが
37篇、おさめられています。

雑誌や新聞などに掲載されたものが集められているため
文体や、語り調子の硬さなどが一貫していないのが
ときに流れを緩慢に感じさせて唯一の残念ではあるものの。

一篇ごとに、身近のさまざまなものへのやわらかな気づきを
その慧眼をとおして見せてくれます。

茶の湯以外のお茶まわりで印象に残ったエピソードは
「終わらぬ夜」 という一篇の、さる料亭での食事のひと幕。
水菓子までひととおり食べ終えたあと、著者はふと気づきます。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
 お茶を熱いものと替えていただいて気づいたことには、
 お茶碗の地模様の縞が茶色い。
 さっきまでのお茶碗は青い縞だった。
 その前は赤いお茶碗。
 さらに前は赤絵のお茶碗。
 ぼんやりしていて、今ごろいつも違う柄だったことに気づいたが、
 それでもすべての柄を覚えている。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  

実になにげないのだけれども、示唆的な話だなあ、と感じます。

出されるたびにお茶碗が違っているということ。
これは、高級料亭ならではの
客への贅沢なサービス、眼の愉しみというだけの話にとどまらず。

先ほどと一見して趣の異なる器で出すということは、つまり
新しい清潔な茶碗にきちんと取り替えて
あらためて淹れたお茶が出されたことへの、暗黙の了解でもあり。

(自分が客人をもてなす際にも留意したいことでもありますね)

おいしい料理に集中するあまり、あるいは緊張感のあまり
はたまた、仲居さんがこともなげに
「さりげなくひそやかに」 心配りして淡々と動いてくれるほど
そんな小さな変化に全く気づけない場合もあるけれども。

だからこそ、相手の思いをさりげなく汲む楽しさも存在するわけで
そんな細やかなところに心を向けることのできる著者の感性を
とても眩しく感じました。
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  • 2016.03.31 Thursday 14:31

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