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男の作法
男の作法
池波 正太郎
(新潮文庫)

もとは昭和56年に単行本が刊行されたようですが
こちらの文庫版は、昭和59年の発行。
私の手元にあるものは12年前、平成12年3月時点で48刷。
現在は何刷になっているのでしょう、ロングセラーの一冊です。

「鮨屋へ行ったときはシャリだなんて言わないで
 普通に 「ゴハン」 と言えばいいんですよ。」

という冒頭の章の見出しからして、どきりとさせられます。
鮨屋独特の合言葉、符牒(ふちょう) ですね。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
 飯のことをシャリとか、箸のことをオテモトとか、
 醤油のことをムラサキとか、あるいはお茶のことをアガリとか、
 そういうことを言われたら、
 昔の本当の鮨屋だったらいやな顔をしたものです。
 それは鮨屋仲間の隠語なんだからね。
 お客が使うことはない。
 
 普通に、
 「お茶をください」
 と言えば、鮨屋のほうでちゃんとしてくれる。

 だけど、いま、みんなそういうことを言うね。
 鮨屋に限らず、万事にそういう知ったかぶりが多い。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  

こんな具合の、筆者お得意の 「食」 にまつわる
ちょっと耳の痛いような話題から
住まい、服装や装飾具、また人間関係のこもごもにいたるまで

「かつては 「男の常識」 とされていたこと」

の数々が語られる一冊です。

語られる、というのは、もともと
筆者自身の若い友人を相手に語った内容の書き起こしが
この本のベースとなっているから。
なので、文体に堅苦しさはまったくありませんし
若いかたにこそ(女性も)楽しめる内容では。

お茶についての直接的な話題というのは、ほぼないのですが
心に残ったのが、「寿命」 「運命」 「死」 「生」 の一連の項。
話題が多岐にわたるなかで、しかし、この本を通底する精神は
ここで語られていることに尽きるように思えました。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
 男は何で自分をみがくか。基本はさっきもいった通り、
 「人間は死ぬ ……」
 という、この簡明な事実を
 できるだけ若いころから意識することにある。
 もう、そのことに尽きるといってもいい。
 何かにつけてそのことを、ふっと思うだけで違ってくるんだよ。
 (中略)
 そうなってくると、自分のまわりのすべてのものが、
 自分をみがくための 「みがき砂」 だということがわかる。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  

自分に与えられた有限の時間の、密度のようなものが
ちょっとした意識の置きようによって随分変わってくると感じますし
だからこそ、日々の些細を愛おしく、大切に暮らせるということ。
それが自身の 「みがき砂」 となること。

これ、茶の湯でいうところの
「一期一会」 にもまさに直結するありようと感じました。

大きな震災からもうすぐ一年。
この本の投げかけるものにはまた、様々な感懐が重なります。
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  • 2016.03.31 Thursday 13:59

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