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  • 2016.03.31 Thursday

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歳月
歳月
茨木 のり子
(花神社)

死別した最愛の夫への思いを綴り
彼の頭文字である 「Y」 と書いた箱に仕舞っておいた詩たち。

「ちょっと照れくさい」 からと
茨木さんは生前にはこれら挽歌を公表しなかったそうです。
遺稿集として編まれ、彼女の一周忌に出版されました。

衝撃を受けた一節があります。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 おたがいに
 なれるのは厭だな
 親しさは
 どんなに深くなってもいいけれど

            (「なれる」 より)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「親しさ」 は深くなっても、「なれる」 のは厭。
凄みを感じます。

これは茨木さん自身のではなく
結婚当初に夫が言ったことばとして描かれています。

「なれる」 とは、もしかしたら
物質的な距離は近くあっても
実はむしろ対象の本質から遠ざかっている状態かもしれず。
近すぎると見えないことが多い、なんていいますけれども
それは 「なれる」 緊張のなさから生じるのかもしれません。

夫婦に限ったことではなくて
親しい人たちにも、身のまわりのものごとにも
それから仕事にしても、決して 「なれる」 ことなく
いつでも清新な目と手と心でいること。

意識しても、なかなか簡単にできることではないですね。
茶の湯でいう 「一期一会」 ということばがよぎります。

その意味で、この詩の書き出しにもどきりとしました。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 あら 雨
 あじさいがきれい
 このブラウス似合います?
 お茶が濃すぎるぞ
 キャッ! ごきぶり
 あの返事は書いておいてくれたか
 レコードもう少し低くして 隣の赤ちゃん目をさますわ
 
 

 とりとめもない会話
 気にもとめなかった なにげなさ
 それらが日々の暮しのなかで
 どれほどの輝きと安らぎを帯びていたか

            (「誤算」 より)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

お天気、音、色彩、そしてお茶を淹れることも…。
どれもふだんの生活のなかでは、ほんの些事ですけれども。

日常は永劫に続かないからこそ
そうしたものが傍らにあってくれることの温かさを
一瞬、きら星を見るごとく意識のうえにのせるだけで
私たちの今の生活も、ほんの少しであれ
なにかが変わりはじめるかもしれません。

また、私どもの製するお茶も、どこかで
なにげなく、どこにでもいるような顔をして
人と人との 「親しさ」 を深めるものであったらうれしいと
そんな思いにもさせられる一編です。
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  • 2016.03.31 Thursday 14:31

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