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  • 2016.03.31 Thursday

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天馬の脚
天馬の脚
室生 犀星
(ウェッジ文庫)

ロマンティックな表題が目を惹く、室生犀星のこの一冊。
『庭をつくる人』 と同じく、ウェッジ文庫からの復刊です。

日々の雑感を記した随筆を中心に
文芸や映画、人物の評や、さらには発句など
バラエティに富む内容となっています。

このなかに、「茶摘」 という
文庫にしてほんの1ページほどの随筆が収められています。

犀星が育った家の庭には、茶畑があったそうで
季節になると茶摘みの手伝いをした思い出が記されています。

手での摘みとりは、地道でとめどない単純作業であり
「茶といふものに恐怖を感じる程、摘むことに飽飽」
した、なんていう正直な一文もあるのですけれど…。

一方で、犀星の描く、生活のなかの製茶風景は瑞々しい。
新茶のかもす、視覚的・嗅覚的なかぐわしさが
実に端的に掬いあげられて。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
 蒸された茶は餅のやうな柔らかい凝固になり、
 揉まれると鮮かな青い色を沁み出してゐた。
 その莚(むしろ)を乾かしたあと、
 四五日といふものは矢張り茶の芽の匂ひがし、
 その匂ひは庭へ出ると直ぐに感じられた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  

このシンプルにして美しい描写のすぐあとに、一転して

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
 二番茶を摘むころは日の当りが暑かった。
 じりじりと汗を搔く母を見ることは、気苦労できらひだった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  

と続いているのですが
少年の繊細な心模様が、お茶の新芽の柔和さとあいまって
不思議と文章全体から受ける瑞々しさは増すのです。
  
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  • 2016.03.31 Thursday 13:27

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