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伊都子の食卓
伊都子の食卓
岡部 伊都子
(藤原書店)

岡部伊都子さんが1950年代から80年代に書かれた
食にまつわる随筆があつめられた一冊。

「美しいお茶」 という、珠玉の一篇がおさめられています。

茶畑の美しさ、茶の若芽の清らかさ。
上等の玉露や煎茶のかもす、香気や余韻の妙。
番茶やほうじ茶に感じる、気のおけなさ。
一見地味な茶の白花によせる、あたたかな感懐…。

お茶というものの存在の美を、ここまで掬いあげた短文を
ほかに知りません。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
 ときどき、棄てるのがもったいないほどきれいな緑色の葉が、
 急須の中で開いていると、
 ふと、枝についていた萌えだちの葉を思いだす。
 この世の風に手をさしのべて、
 ようやく伸びてきたばっかりの若葉であった。
 あの幼い葉の全身のエキスを、いま吸わせてもらったのだ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  

走りのお茶、しかも昔ながらに加工時の蒸し時間が短めな。

丹念に茶葉を揉み、針のようにぴんと細く仕上げられたものが
急須のなかでお湯をふくんで、もとの葉のかたちを取り戻す
奇跡のようなひととき。

茶葉がほろほろに細かい、深蒸し系のお茶が人気の昨今です。
深蒸しは短い時間でさっと色濃く出て、簡便ではあるものの
私は個人的には、昔ながらの普通蒸しのほうが
その美感も風味の奥行きも好みなものですから
こんな一節に出会えると、しみじみうれしく思います。

食、ということに関して
土の精気から乖離した、上面に感じる雑文が幅をきかせ
そのスノビズムに辟易もするこのごろ。

この本に一貫してつづられている
「無演出、無装飾の気品と、素材だけで構成される味」 は
また生前の岡部さんの凛としたお姿とも重なり
あらためて、食は人なり、と感じさせられます。
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  • 2016.03.31 Thursday 15:15

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