『
白い馬の季節』
監督・脚本: ニンツァイ(寧才) (2005 / 中国)
少雨などによる気候要因と、過放牧などによる人的要因から
豊かだった草原は、砂漠化の一途をたどっています。
中国内モンゴル自治区の、気高き草原の民、ウルゲン一家。
例外にもれず、この家族も愛馬を手放し、遊牧民の暮らしを捨て
町へ移り住まざるをえない状況にまで追いこまれます。
パオに住み、伝統的な遊牧生活をおくる人々の姿は
今までも、映画や絵本等に、美しく叙情的に描かれてきました。
今回、やせて干上がった黄土色の大地を映像で見るにつれ
残念ながら、生態環境の保護や回復が
家族愛や、伝統文化への誇りとは容易に相容れない
厳然たる現実に、やりきれない思いが残りました。
ところで。
この映画で多かったのが、家族がお茶を飲むシーン。
訪ねてきた人々にも、「お茶でもどうぞ」とすすめていました。
お茶を淹れる(つくる)ところのシーンがなかったのですが
モンゴルでは一般的に、磚茶(たんちゃ)を飲むそうです。
プーアル茶と似た製法の“後発酵茶(こうはっこうちゃ)”で
茶葉を、麹や酵母で発酵させてつくるので、やや個性の強い味。
それをギュッとプレスして、カチカチの固形にしてあります。
(人を訪ねる際に、この磚茶を土産に使うシーンもありました)
さて、飲むときは、磚茶を削り、大きな鍋や鉄釜で煮出します。
塩で味を調え、羊の乳を入れた、しょっぱいミルクティー。
チベットのバター茶よりも、脂肪分は淡白です。
これをたっぷり作り置きしておくのが、モンゴル流ですね。
以前、たしか下北沢のモンゴル料理店で飲んでみたことがあります。
思ったよりクセは気にならず、おいしくいただきました。
日本人の感覚からすると、お茶というよりスープに近い感じです。
疲れをいやし、労をねぎらい、栄養をいただく。
お茶はモンゴルのかたがたにとっても、不可欠のようです。