先日、
熱海市の澤田政廣記念美術館の訪問記 のなかで
熱海梅園の様子も少しお伝えしましたが
あらためて、梅の花、盛りですね。
ちょうど今日は、あの菅原道真公の忌日でもあるそうで
この日にあわせ、京都の
北野天満宮 では
“梅花祭(ばいかさい)”という催しが行われています。
ウィキペディアの“ウメ”の項 によれば
原産地は中国、長江流域だそうです。
日本には、8世紀ごろには渡ってきていたといわれますね。
当時の日本人にとって、エキゾチックな清香を放つ小花は
新鮮な色香を感じる存在だったことでしょう。
そのころの古典を読むと、“花”といえば梅を指しますものね。
「春告草」「好文木(こうぶんぼく)」「花の兄」など
風流な異名が多いのも、古来よりの人気の裏づけでしょう。
茶花としても用いられる、梅の花。
利休のころには、梅が非常に多く使われたそうです。
紅梅を平たい水盤に生けよ、と秀吉に命じられた利休は
機転をきかせ、花と蕾のみを水に浮かべたという逸話も残ります。
水にほろりと落ちたる梅の姿、さぞ美しかったことでしょう。
また、闇夜のなかでも、白い花弁にほのかに光を集めて
芳香とともに自らの在りかを知らせる白梅は
冬期の“夜咄(よばなし)の茶事”にも用いられます。
この“夜咄の茶事”は、名のごとく日没後に行われ
ともに語らうことに主眼が置かれた茶事です。
暗がりのなかで、些少なものが目に入らないからこそ
本質を透視できるかのような冴え冴えとした心地がします。
そんな性格上からか、夜咄では通常、花は入れないのですが
白い花だけは許されています。
手燭(しゅしょく)や、露地をともす灯籠もまことに幻想的で
この秘めたる雰囲気に似合う、数少ない花といえましょう。
※ 参考文献
『
茶花を入れてみよう―茶席の花と花入の基本』
(淡交社)