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  • 2016.03.31 Thursday

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落語ファンのかたならご存じかもしれませんが
5月に、新たに5人の真打ちが誕生するそうです。

落語芸術協会、5人が真打ち昇進
(3月30日付 読売新聞)

新真打ちに名を連ねる 三遊亭遊喜 さんは
藤枝市のおとなりの、島田市出身とのこと。
そういえば先日、島田市長に表敬訪問された様子が
複数の地元紙で報道されていました。

どの新聞に書かれていたか、定かでないのですが
高座へあがるときに流れる出囃子(でばやし)は
茶摘みの情景をうたった 「ちゃっきりぶし」 なのだそうです。
さすが、お茶どころ出身。

こうした選曲には、噺家さんの個性が出て面白いですね。
ウィキペディアの 出囃子(落語) ページにある
「主な出囃子」 という項目を見てみたところ
遊喜さんのように、出身の地域にちなんだ曲を
出囃子にしている人も少なくないようですよ。

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『朝鮮王朝の絵画と日本 
 ― 宗達、大雅、若冲も学んだ隣国の美 ―』
於・静岡県立美術館
2009年2月17日(火)〜3月29日(日) * 終了しました
※ このあと 仙台市博物館岡山県立美術館 に巡回します。

朝鮮半島最後の統一王朝、李氏朝鮮(1392〜1910年)。
500有余年にわたる歴史のなかで
多くの芸術家を生み出したこの国の絵画を紹介するとともに
「日本の絵師たちに与えた影響」 を探る展覧会です。

中国文化の経由地という印象で語られることの多い、朝鮮。
しかし今展では、室町〜江戸期の絵師たちが
ことのほか朝鮮絵画からも影響を受けていたことがわかります。

展示されるのは、朝鮮王朝の仏画や宮廷画、文人画から
日本の民藝運動のなかで、あらためて美を見出された民画まで。
さらには、朝鮮絵画との影響が認められる日本の絵画と
江戸期の 「朝鮮通信使」 を記録した図巻など。
図録に収録されている数は、全326件という膨大さです。

ただ、それゆえに残念ながら
静岡では全期間通しで展示された作品のほうが少ないくらい。
また、静岡ではお目にかかれないものも、けっこうありました。
これから仙台、岡山でご覧になる予定のかたには
事前にホームページなどで展示替リストを確認してから
足を運ぶことをおすすめします。

       *   *   *  

さて、かねてから見てみたいと思い、今回かなったのが
朝鮮王朝後期の独特な絵画手法 「紙織(ししょく)」 。
今日、確認されている作例はきわめて少ないそうですが
今展では6件も出品されています。

画を描いた紙の縦方向に、細い細い切れこみを無数に入れ
その横方向に、まるで織物のように
帯状の白紙を織りこんでいくという、変わった手法です。

よく目を凝らして見ると、非常にこまかな市松状の織り模様。
なんと根気の要る作業でしょう。
白紙で彩色が隠れる面があるがゆえに、全体の色調が抑えられ
淡みがかった、独特の温和な雰囲気となっています。

これが、伊藤若冲(じゃくちゅう)の
『樹花鳥獣図屏風』 や 『白象群獣図』 にみられる
モザイクタイルの原画のような、独特の 「枡目(ますめ)描き」 に
ヒントを与えたのではないか、という指摘もありました。

ちなみに 「枡目描き」 については、以前から
方眼のマス目に描かれる、西陣織の正絵(いわゆる図案)を
発想の源としたのでは、という説が有名です。
果たしてどうなのでしょうね?

       *   *   *  

ところで若冲といえば、ジョー・プライス氏のコレクションに
『猛虎図』 という作品があります。
これが、朝鮮王朝中期の 『虎図』 を模写したもの。

ただし若冲は、『虎図』 が朝鮮伝来のものとは知らず
中国・南宋時代の毛益(もうえき)という画家の作品と
認識していたのだといいます。
今展には残念なことに 『猛虎図』 が出品されていませんが
原図の 『虎図』 のほうは拝見することができます。

先ごろ発売された 『別冊太陽 韓国・朝鮮の絵画』 には
2作品並んで収録されています。

韓国・朝鮮の絵画 (別冊太陽) 
別冊太陽
韓国・朝鮮の絵画』 
(平凡社)

今展の予習に、もってこいの1冊ですよ。

当時の日本の画家たちは、この若冲に限らず
朝鮮伝来の絵画作品と、中国伝来のものとを
現代のわれわれがこだわるほどには
分類して把握していなかったのかもしれませんね。

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お茶のことのは ● 茶柱(ちゃばしら)

  番茶などをついだとき、
  茶碗の中に立って浮いている茶の茎。
  俗に吉兆であるといわれる。
            ― 大辞泉 増補・新装版(小学館)より ―

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  

かつては身近な縁起ものだった、茶柱。
ペットボトルが普及したこのごろは
見たことがない若いかたも多いようですね。

番茶などを、急須や土瓶から茶碗へ注ぐときに
注ぎ口内部の茶こしを、するっと通りぬけたもの。
くきのほか、葉軸の部分も茶柱となります。

ただし、茶碗のなかで垂直に立って浮いているものだけ。
横たわっているものは、そうとは呼べません。

柴田書店の 『緑茶の事典』 によれば
茶柱を 「黙ってふところに入れておくとよいことがある」
なんていわれているそうですよ。

昨今、茶柱が立ちにくい理由のひとつには
網目の細かな茶こしが付属した急須の普及が挙げられます。

ちなみに、上級の煎茶や玉露はもともと
仕上げ加工の工程で、くきや葉軸を取り去るのが主流。
茶柱が立つ可能性はきわめて少ないのです。

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先週のことになりますが
朝日新聞 夕刊 「人生の贈りもの」 欄に連載された
グラフィックデザイナーで居酒屋についての著書も多い
太田和彦氏のインタビューを、面白く拝読しました。

「レストランや食堂は胃袋を満足させる。
 居酒屋は精神を満足させる場所です。
 … (中略) …
 何も食べないで飲んでいる人も心をさかなにしている。
 群衆の中の孤独という意味では、居酒屋は、都会の産物です。
 人は死ぬ時に一人。
 自立して死を迎えた方が精神上いい。
 中高年の自立の勉強に、居酒屋はもってこいですよ」

うーん、示唆にとんだ文章。
 
この 「居酒屋」 という部分は
同じくお酒を愉しむ場である 「バー」 にも言い換えられる。
そして、もしかするとお酒のみならず
お茶をする場所とも置換できるのではないでしょうか。

たとえば、ひとりで出かける 「喫茶店」 や 「カフェ」 。
あるいは 「茶席」 にも。

もちろんお酒とお茶とでは、心身への作用は異なるけれども
これらの空間はいずれも、人と人とを繋ぐ一方で
わが身を癒し、また、そっと省みる場にもなる。

何より、経歴や肩書を取り去った自分があらわになる場。
ふと、心がぼんやりと 「無に近い状態」 になったとき
その空虚にひたることができるか。
それを試されている場でもあるように感じます。

さて、ひとり酒ではなく
周りの人との会話について触れた部分も印象的でした。

「十中八、九は自分の話になっていく。
 だから、プレゼンする訓練にとてもいい。
 『あの人がくると、何か上品になる。愉快な人だね』
 となってこそ、大人の男として味が出る。
 人間形成の道場です」

自分の話とは、自慢話や愚痴や悪口なんかではなく。

居酒屋で、茶席やカフェで、自分もそうなりたいものだと
女である私も深くうなずいてしまったくだりでした。

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200903250809000.jpg
カフェ タナカ(愛知・名古屋)製 「NAGOYAフィナンシェ」

左が 「八丁味噌」 、右が 「西尾抹茶」 です。
ともに愛知県の名物ですね。

「八丁味噌」 のほうは、味噌独特の風味や塩けが強くなく
濃密で良質なバターやアーモンドプードルの奥から
ほんのり、ふわりとうま味が広がってきます。
この引き算加減が、まことに上品。

「西尾抹茶」 、これがまたクセになるんです。
西尾産 の抹茶の軽やかなコクとほろ苦みに
白黒のゴマの香味がアクセントとなって、好バランス。
なにより、抹茶の風味だけが突出しすぎないのがいい。

昨今、抹茶を使った洋菓子は多いものの
抹茶の量が過剰だったり、原料茶の質が低かったりして
おいしい日本茶のお茶うけに適わないものもあります。
その点、この 「西尾抹茶」 は安心しておすすめできます。

バターをふんだんに使ったフィナンシェには、とくに
香り高く、口中をさっぱりとさせる 上ほうじ茶 が合います。
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山梨県忍野村、「四季の杜 おしの公園」 内に建つ
小池邦夫 絵手紙美術館
 
200903201426002.jpg 
 
「絵手紙創始者」 といわれる小池邦夫氏の
作品世界に触れることができる場です。

詩・書・画。
それらを一体として、折々の感動を小さな葉書に託す。
たった1枚のなかの充足、まさに溢れ出るほどの。

なんとなく絵手紙を敬遠していた私でしたが
小池氏の作品に触れて、イメージがガラリと変わりました。

というのも、近年、絵手紙人気が広まるにつれ
その独特のタッチを再現するのが目的であるかのような
ただなぞるだけのような、さびしい風潮もみられるから。
だから、小池氏のこんなことばに、どきりとさせられ。

「縦線、横線、そして渦巻き。
 これさえ引ければ文字は書ける」

シンプルながら非常に難易度が高い。
筆をとってから、その無我無心にいたるまでに
どれほどの鍛錬、どれほどの歳月が必要なのでしょう。

模倣すべきは方法論ではなく、筆の、まさに息づかい。
それは、「たゞ湯をわかし茶をたてゝのむばかり」 の
茶の湯の難しさにも通じるように感じます。
なんと筆力、人間力が露呈することでしょう。

       *   *   *  

ちなみに。

絵手紙、なんていうことばすらなかったかもしれない
今から30年前のこと。

「僕は一年間にはがきを六万枚書きました。
 その一枚を、銀花に入れます。」

そう表紙に書かれた雑誌 『季刊 銀花』 第37号には
全冊に1枚ずつ、小池氏肉筆の手紙が綴じこまれたとか。
なんと1年で6万枚、日割りしたら160枚以上!
今日の絵手紙人気をよぶ大きな契機となった企画でしょう。

そしてこの春、再び小池氏の特集を組んだ 『銀花』 。

銀花 2009年 03月号 [雑誌]
季刊 銀花
2009年 春 第157号
(文化出版局)

この美術館を訪れたいと思った、きっかけの一冊です。

雑誌には、美術館の展示ではほとんど取り上げられない
家族や師、友から小池氏に宛てての、あまたの絵手紙も。
“手紙を通じた交流” を垣間見ることができます。
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『企画展 花と富士山』
於・フジヤマミュージアム(山梨・富士吉田)
2009年3月7日(土)〜5月31日(日)

朝に夕べに、夏に冬に。
その日のお天気や、仰ぐ方角によっても
じつにさまざまな表情をみせる霊山、 富士 。
多くの画家にとって、格好の画題なのでしょう。

近現代の画家たちが描いた、多くの富士山をあつめた
清浄な雰囲気の美術館が山梨にあります。

洋画、日本画、ポップアート。
富士山という画題は同じでも、タッチはさまざま。
好きな画家を見つける楽しさも秘めた美術館です。

ハイランドリゾート ホテル&スパと
富士急ハイランドに隣接する、小ぶりの建物。
中央には天井の高いエントランスホールが配され
それを取り囲むように、ぐるりと一周する展示空間は
「富士登山をイメージした」 という
ゆるやかな傾斜のついた回廊となっています。

現在の企画展は 『花と富士山』 。
花、決して彩るだけの添えものではなく
その生気が、富士山のなかでとくとくと渦まく精気と相まって。

しかし観るほどに不思議。
大きく描かれても、彼方に霞むように小さく描かれても
富士山はなぜ、あれほどの求心力をもつのでしょうか。
人知の及ぶところではない山、その絵画を観るたびに
すがすがしい敗北感のようなものすら覚えました。

       *   *   *  

余談ですが、ここはカフェメニューがハイレベル。

200903201322000.jpg
 
『花と富士山』 会期中の土日祝限定という
花をイメージしたケーキのうちのひとつです。
これは桜、ベリーと小豆餡との三位一体が絶妙で
食感も軽やかな春らしい一品。
実際は写真よりも澄んだ桜色でした。
 
200903201321000.jpg
 
定番メニューのアイスクリーム。
富士山のイメージをとり入れたメニューが多いようで
これには富士山形のサブレが添えられていました。

ケーキなどはもしかすると、おとなりのホテル製かも。
そういえば、スタッフさんたちの接客やたたずまいも
ホテルマン並みに清々しく
心地よいひとときを過ごすことができました。

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静岡ローカルのニュース番組などでは
お茶の大敵、遅霜予報 が流れるようになりました。
茶業関係にたずさわる者にとって
これほど春の到来を感じさせる予報はありません。

さて、日本特有の春到来のニュース、といえば
やはり ソメイヨシノ の開花予想でしょう。

気象庁が先日発表した、第3回の開花予想 によれば
静岡は明日、20日だとか。
平年より8日も早い予想です。

200903191124000.jpg

弊社の近所のソメイヨシノ。
花はまだ見あたりませんでしたが
いよいよ、かたいつぼみがふくらんできました。

ちょうど明日は祝日。
3連休のかたもいらっしゃるでしょう。

カジュアルに、手持ちの器や道具などを活用して
ピクニック気分で 野点(のだて) など
愉しんでみてはいかがでしょうか。
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お茶会のマナー 24 ● 主菓子を取るときは手前から

おもに、濃茶(こいちゃ)をいただく際に供されるのは
練切(ねりきり)や生菓子、蒸菓子などの
ややボリューム感のある 「主菓子(おもがし)」 。

この主菓子が、銘々皿で供されるのではなく
人数分まとめて盛られた、鉢などの菓子器が回ってきたら。
複数個あるうちの、どれを取ったらよいでしょう。

主菓子の場合は、添えられた取り箸を使って
器のなかのいちばん手前のものから取るようにします。

もし、いちばん手前の列が1個だけではなく
左右にかけて2〜3個並んでいる場合は
右端にあるものから取るようにしてください。

右手が利き手の人が多いですから
箸を右手で持って、右側のお菓子から取るようにすれば
ほかの人の分を箸先で触れて欠いてしまったり
くずしてしまったりする粗相が防げる、という理由から。
合理的ですね。

取る際には、次の順番を待つ客に 「お先に」 と一礼してから
菓子器から自分の 懐紙 の上へと、菓子をひとつうつします。

懐紙にのせたあとの主菓子のいただきかたは
お茶会のマナー 10」 をご参照くださいね。

       *   *   *  

さて一方、薄茶(うすちゃ)には一般的に
落雁(らくがん) の類や有平糖(あるへいとう)といった
軽めで小さめの 「干菓子(ひがし)」 が供されます。

ひとつの器に2種類盛られることが多いようです。
ただし、それらを取る順番は流儀によって異なります。
まず向こう側のものを、次に手前側を取る流儀が多いようです。
わからない場合は、上座の客の所作をご参考に。

なお、干菓子を取るときにも、主菓子と同様に
まず次客にひとこと 「お先に」 とあいさつしてください。
そして、小高く重ねるように盛られているものは
なるべくくずさないように注意しながら、上にのったものから
1種につきひとつずつ自分の懐紙へうつします。

箸は添えられませんので、指でつまむようにして取ります。
菓子に触れた指先は、懐紙の端で軽くぬぐうとよいでしょう。


※ 参考文献
  『知っておきたい茶会の心得 お茶会に行ってみよう』
  (淡交社)
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日本記念日協会 のサイトを見て、びっくり。
毎月17日は、17 → 「いな」 の語呂あわせで
「いなりの日」 なんですって。

バリエーション豊富で、手軽につまめるおいなりさんは
食事としてはもちろん、お茶うけ にもなりますね。
味に地域性が出るので、旅先で食べるのも楽しいですよ。

おいなりさんといえば、稲荷神社。
こちらは、豊川稲荷ご本殿前に鎮座するおきつねさん。
筋肉の量感もあらわ、野性的なにおいすらする像です。

200903081213001.jpg

やはり、お揚げに目がないんでしょうか。

       *   *   *  

ところで。

茶業界には古くから 「きつね葉」 ということばがあるんです。
弊社のベテラン茶師は 「きつねっぱ」 と言っています。
変わった表現。

由来には諸説あるようですが
おおむね、お茶の葉の変幻自在なさまを表現して
「お茶の葉は、きつね葉だね」 とたとえます。

同じ茶園の、同じ木からとれた生葉でも
製法ひとつで、煎茶にもほうじ茶にも、紅茶にも化ける。

さらに、同じように煎茶をつくったとしても
茶師の加工の腕ひとつで、味や見ために差が出てくる。

まるで、茶葉が化けたり、化かされたり。
古来、霊獣とされてきたきつねを引きあいに出すなんて
なかなかお洒落だと思いませんか?

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