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落語ファンのかたならご存じかもしれませんが
5月に、新たに5人の真打ちが誕生するそうです。
「落語芸術協会、5人が真打ち昇進」
(3月30日付 読売新聞)
新真打ちに名を連ねる 三遊亭遊喜 さんは
藤枝市のおとなりの、島田市出身とのこと。
そういえば先日、島田市長に表敬訪問された様子が
複数の地元紙で報道されていました。
どの新聞に書かれていたか、定かでないのですが
高座へあがるときに流れる出囃子(でばやし)は
茶摘みの情景をうたった 「ちゃっきりぶし」 なのだそうです。
さすが、お茶どころ出身。
こうした選曲には、噺家さんの個性が出て面白いですね。
ウィキペディアの 出囃子(落語) ページにある
「主な出囃子」 という項目を見てみたところ
遊喜さんのように、出身の地域にちなんだ曲を
出囃子にしている人も少なくないようですよ。
『朝鮮王朝の絵画と日本
― 宗達、大雅、若冲も学んだ隣国の美 ―』
於・静岡県立美術館
2009年2月17日(火)〜3月29日(日) * 終了しました
※ このあと 仙台市博物館 、岡山県立美術館 に巡回します。
朝鮮半島最後の統一王朝、李氏朝鮮(1392〜1910年)。
500有余年にわたる歴史のなかで
多くの芸術家を生み出したこの国の絵画を紹介するとともに
「日本の絵師たちに与えた影響」 を探る展覧会です。
中国文化の経由地という印象で語られることの多い、朝鮮。
しかし今展では、室町〜江戸期の絵師たちが
ことのほか朝鮮絵画からも影響を受けていたことがわかります。
展示されるのは、朝鮮王朝の仏画や宮廷画、文人画から
日本の民藝運動のなかで、あらためて美を見出された民画まで。
さらには、朝鮮絵画との影響が認められる日本の絵画と
江戸期の 「朝鮮通信使」 を記録した図巻など。
図録に収録されている数は、全326件という膨大さです。
ただ、それゆえに残念ながら
静岡では全期間通しで展示された作品のほうが少ないくらい。
また、静岡ではお目にかかれないものも、けっこうありました。
これから仙台、岡山でご覧になる予定のかたには
事前にホームページなどで展示替リストを確認してから
足を運ぶことをおすすめします。
* * *
さて、かねてから見てみたいと思い、今回かなったのが
朝鮮王朝後期の独特な絵画手法 「紙織(ししょく)」 。
今日、確認されている作例はきわめて少ないそうですが
今展では6件も出品されています。
画を描いた紙の縦方向に、細い細い切れこみを無数に入れ
その横方向に、まるで織物のように
帯状の白紙を織りこんでいくという、変わった手法です。
よく目を凝らして見ると、非常にこまかな市松状の織り模様。
なんと根気の要る作業でしょう。
白紙で彩色が隠れる面があるがゆえに、全体の色調が抑えられ
淡みがかった、独特の温和な雰囲気となっています。
これが、伊藤若冲(じゃくちゅう)の
『樹花鳥獣図屏風』 や 『白象群獣図』 にみられる
モザイクタイルの原画のような、独特の 「枡目(ますめ)描き」 に
ヒントを与えたのではないか、という指摘もありました。
ちなみに 「枡目描き」 については、以前から
方眼のマス目に描かれる、西陣織の正絵(いわゆる図案)を
発想の源としたのでは、という説が有名です。
果たしてどうなのでしょうね?
* * *
ところで若冲といえば、ジョー・プライス氏のコレクションに
『猛虎図』 という作品があります。
これが、朝鮮王朝中期の 『虎図』 を模写したもの。
ただし若冲は、『虎図』 が朝鮮伝来のものとは知らず
中国・南宋時代の毛益(もうえき)という画家の作品と
認識していたのだといいます。
今展には残念なことに 『猛虎図』 が出品されていませんが
原図の 『虎図』 のほうは拝見することができます。
先ごろ発売された 『別冊太陽 韓国・朝鮮の絵画』 には
2作品並んで収録されています。
別冊太陽
『韓国・朝鮮の絵画』
(平凡社)
今展の予習に、もってこいの1冊ですよ。
当時の日本の画家たちは、この若冲に限らず
朝鮮伝来の絵画作品と、中国伝来のものとを
現代のわれわれがこだわるほどには
分類して把握していなかったのかもしれませんね。
お茶のことのは ●
茶柱(ちゃばしら)先週のことになりますが
朝日新聞 夕刊 「人生の贈りもの」 欄に連載された
グラフィックデザイナーで居酒屋についての著書も多い
太田和彦氏のインタビューを、面白く拝読しました。
「レストランや食堂は胃袋を満足させる。
居酒屋は精神を満足させる場所です。
… (中略) …
何も食べないで飲んでいる人も心をさかなにしている。
群衆の中の孤独という意味では、居酒屋は、都会の産物です。
人は死ぬ時に一人。
自立して死を迎えた方が精神上いい。
中高年の自立の勉強に、居酒屋はもってこいですよ」
うーん、示唆にとんだ文章。
この 「居酒屋」 という部分は
同じくお酒を愉しむ場である 「バー」 にも言い換えられる。
そして、もしかするとお酒のみならず
お茶をする場所とも置換できるのではないでしょうか。
たとえば、ひとりで出かける 「喫茶店」 や 「カフェ」 。
あるいは 「茶席」 にも。
もちろんお酒とお茶とでは、心身への作用は異なるけれども
これらの空間はいずれも、人と人とを繋ぐ一方で
わが身を癒し、また、そっと省みる場にもなる。
何より、経歴や肩書を取り去った自分があらわになる場。
ふと、心がぼんやりと 「無に近い状態」 になったとき
その空虚にひたることができるか。
それを試されている場でもあるように感じます。
さて、ひとり酒ではなく
周りの人との会話について触れた部分も印象的でした。
「十中八、九は自分の話になっていく。
だから、プレゼンする訓練にとてもいい。
『あの人がくると、何か上品になる。愉快な人だね』
となってこそ、大人の男として味が出る。
人間形成の道場です」
自分の話とは、自慢話や愚痴や悪口なんかではなく。
居酒屋で、茶席やカフェで、自分もそうなりたいものだと
女である私も深くうなずいてしまったくだりでした。
『企画展 花と富士山』
於・フジヤマミュージアム(山梨・富士吉田)
2009年3月7日(土)〜5月31日(日)
朝に夕べに、夏に冬に。
その日のお天気や、仰ぐ方角によっても
じつにさまざまな表情をみせる霊山、 富士 。
多くの画家にとって、格好の画題なのでしょう。
近現代の画家たちが描いた、多くの富士山をあつめた
清浄な雰囲気の美術館が山梨にあります。
洋画、日本画、ポップアート。
富士山という画題は同じでも、タッチはさまざま。
好きな画家を見つける楽しさも秘めた美術館です。
ハイランドリゾート ホテル&スパと
富士急ハイランドに隣接する、小ぶりの建物。
中央には天井の高いエントランスホールが配され
それを取り囲むように、ぐるりと一周する展示空間は
「富士登山をイメージした」 という
ゆるやかな傾斜のついた回廊となっています。
現在の企画展は 『花と富士山』 。
花、決して彩るだけの添えものではなく
その生気が、富士山のなかでとくとくと渦まく精気と相まって。
しかし観るほどに不思議。
大きく描かれても、彼方に霞むように小さく描かれても
富士山はなぜ、あれほどの求心力をもつのでしょうか。
人知の及ぶところではない山、その絵画を観るたびに
すがすがしい敗北感のようなものすら覚えました。
* * *
余談ですが、ここはカフェメニューがハイレベル。
『花と富士山』 会期中の土日祝限定という
花をイメージしたケーキのうちのひとつです。
これは桜、ベリーと小豆餡との三位一体が絶妙で
食感も軽やかな春らしい一品。
実際は写真よりも澄んだ桜色でした。
定番メニューのアイスクリーム。
富士山のイメージをとり入れたメニューが多いようで
これには富士山形のサブレが添えられていました。
ケーキなどはもしかすると、おとなりのホテル製かも。
そういえば、スタッフさんたちの接客やたたずまいも
ホテルマン並みに清々しく
心地よいひとときを過ごすことができました。
日本記念日協会
のサイトを見て、びっくり。