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なにせ 静岡はコーヒー熱がぼちぼち なものですから
京都を訪れるたび、喫茶店めぐりが楽しみなのです。
古きよき喫茶店がたくさんありますね。
なかでも、河原町駅近くの
昭和9年創業の名曲喫茶、フランソア喫茶室 は
コーヒーの味はもちろん、バロック風の内装も素敵で
扉を開けるや、時の流れがふわりと緩まるように感じます。
多くの文化人に愛されてきたことでも知られるお店です。
朝日新聞 の、11月28日付 「惜別」 欄で
そこの主人だった立野留志子さんのご逝去を知りました。
現在は娘さんがお店を継いでおられるようです。
記事のなかで目に留まったのが
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
戦時中はコーヒーの代わりに番茶を出し、
店名は 「都(みやこ)茶房」 に変えさせられた。
「いつか平和が来る」 と蓄えておいたコーヒー豆を使い、
戦後は繁盛した。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
という記述。
都茶房とか、番茶とか。
あの空間の雰囲気で、それはいくらなんでも …
当然、クラシック音楽も流せなかったことでしょう。
お店は文化人らのサロン的な場だったと聞きますから
戦争へ向かう狂気のなかで強烈な風当たりを受けたことは
想像にかたくありません。
それでも、こうして活字になった歴史のひとこまを読むと
なんともざらざらとした違和感におそわれます。
そもそも日本茶文化にしても、おおもとをたどれば
純粋に日本発祥とはいえませんしね。
日ごろから、コーヒーやら、いろんな嗜好飲料を片手に
とりとめのないおしゃべりが楽しめるわたしたちは
不況のただ中とはいえ、なんて幸福なのだろうと感じます。
お茶のことのは ●
渋茶(しぶちゃ)冬を迎えるころの煎茶葉には
新茶にはない風雅な熟成味が加わっており
また趣きの異なるおいしさを愉しめます。
聞くところによれば、京都の有名な茶家の宗匠も
お歳暮には抹茶ではなく煎茶を贈るとか。
写真は一例、「特上煎茶 百福」 200g缶のお詰合せです。
小売店を介さない、メーカー直販ならではの
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季節のごあいさつに、ぜひお役立てくださいませ。
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今日は、三島由紀夫の命日なのだそうです。
名作を多く残したなかでも
もっとも有名といえるであろう一冊、『金閣寺』 。
『金閣寺』
三島 由紀夫
(新潮文庫)
映像となって強く焼きついているシーンがあります。
それは、第二章の、「茶」 にまつわる一場面。
金閣寺の徒弟(とてい)だった 「私」 が
同じく徒弟修行中の少年とともに南禅寺の山門から見た
「ほとんど信じがたい」 光景です。
眼下の方丈、天授庵(てんじゅあん)のひろい座敷に
ただひとり、華美な長振袖を身につけて坐る
「若い美しい女」 に、ふたりは目を奪われます。
以下、小説からの引用です。
(引用部分が長めのため、緑字で表示します)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
そのとき奥から、軍服の若い陸軍士官があらわれた。彼は礼儀正しく女の一二尺前に正坐して、女に対した。しばらく二人はじっと対坐していた。
女が立上った。物静かに廊下の闇に消えた。ややあって、女が茶碗を捧げて、微風にその長い袂(たもと)をゆらめかせて、還って来た。男の前に茶をすすめる。作法どおりに薄茶をすすめてから、もとのところに坐った。男が何か言っている。男はなかなか茶を喫しない。その時間が異様に長くて、異様に緊張しているのが感じられる。女は深くうなだれている。……
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それは、戦争末期、5月のよく晴れた日だったといいます。
混迷の時代にそぐわぬ派手な着物をまとった女性と
士官とのわけありげな関係が、読む者の想像をかきたてます。
と、ここから驚きの展開が待っています。
続きを引用してみますと …
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
信じがたいことが起ったのはそのあとである。女は姿勢を正したまま、にわかに襟元をくつろげた。私の耳には固い帯裏から引き抜かれる絹の音がほとんどきこえた。白い胸があらわれた。私は息を呑んだ。女は白い豊かな乳房の片方を、あらわに自分の手で引き出した。
士官は深い暗い色の茶碗を捧げ持って、女の前へ膝行(しっこう)した。女は乳房を両手で揉むようにした。
私はそれを見たとは云わないが、暗い茶碗の内側に泡立っている鶯(うぐいす)いろの茶の中へ、白いあたたかい乳がほとばしり、滴(した)たりを残して納まるさま、静寂な茶のおもてがこの白い乳に濁って泡立つさまを、眼前に見るようにありありと感じたのである。
男は茶碗をかかげ、そのふしぎな茶を飲み干した。女の白い胸もとは隠された。
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いまも紅葉の名所として知られる天授庵ですが
このときの屋外は、青空に爽やかな新緑。
方丈の座敷に浮かびあがる、女性の白い肌。
うぐいす色の薄茶と白い乳。
深く暗い陰翳をたたえた色彩のコントラストが
ありありと迫るかのようです。
さて、この 「信じがたい光景」 のその後ですが
のちに 「私」 は、ふたりに秘められた悲しいロマンスを
ある娘から聞くことになります。
そしてさらにのち、偶然にも長振袖の女性と出会うことに …
それは第五章以降に。
若い男女の行く末、そして
「私」 とその女性との出会いの顛末が気になるかたは
ぜひ文庫本をひらいて確かめてみてください。
この数年、秋口になると
クマやシカ、イノシシ、サルなど野生獣の目撃情報や
農作物等への被害が、たびたび報じられますね。
ここ静岡県も例外ではなく
弊社自慢の 上級煎茶 の生産地、掛川市山間部では
クマの目撃情報が、先月から5件も相次いでいます。
「掛川でクマの目撃情報相次ぐ
児童らランドセルに鈴を付け用心」
(11月17日付 中日新聞 静岡版)
幸い、掛川市ではまだ目撃情報にとどまっていて
これといった被害は出ていないそうですが
登下校の子どもたちや、茶生産者らの安全を考えると
非常に心配です。
こうした野生獣の被害やその対策については
農林水産省サイト内 「鳥獣被害対策コーナー」 のほか
くわしく情報をアップしている自治体も多いので
気になるかたは目をとおしてみてください。
具体的対策のなかでひとつ、これだけは。
紅葉シーズンまっただ中のいま
都市部からの観光客のかたも含め
ぜひとも皆で気をつけましょう、と呼びかけたいのが
「餌付けや、生ゴミのポイ捨てをなくす」
という点。
誰の目もない山中だからって
残ったお弁当やお菓子、ポイ捨てしていませんか?
食物は、たしかに土にかえる有機体ですけれども
それらが野生獣を誘う要因になることもあるそうです。
かわいいからと餌付けするのも、もちろんタブー。
負のスパイラルの一歩になりかねません。
大きな被害を未然に防ぐためにも
里山での大切なマナーとして、心に留めておいてくださいね。
昨日の 「手土産、いただく側の心づかい」 に関連して
来客マナーについて、よくいただくご質問を
もうひとつ記したいと思います。
それは、お茶とお菓子をお出しする際の並べかた。
お茶だけなら、お客さまの前中央に置けばいいのですが
お菓子も一緒にお出しするときには
「どちらが右でどちらが左」 なのでしょうか?
基本的には、お客さまからみて
お菓子が左、お茶が右
の配置がよいとされています。
お茶碗が右手前にあると
右利きの人にとっては、手にとりやすいですね。
また、この並びならば、お客さまがお茶碗をとる際
服の袖口がお菓子に触れて汚れたりするのを防げます。
生クリームたっぷりのケーキでも安心です。
さらにその際、おしぼりも一緒にお出しするなら
お菓子が左、お茶が中央、おしぼりが右
の配置で。
おしぼりはお客さまからみて縦になるよう置くとスマートです。
* * *
なお、和の作法では
お客さまの下座側からお茶やお菓子をお出しするのが原則。
よくビジネスマナーで 「お茶は右側から」 といわれるのは
洋の食事のマナーにのっとっているからでしょう。
和の作法では、左側か右側か一概にはいえず
下座がお客さまの左側ならば、そちらにまわります。
ですから、客間が和室であれば
まずはお客さまの下座側に坐り、畳の上にお盆を置きます。
座卓の上にお盆を置くのは好ましくありません。
そして、お茶とお菓子を卓上に並べますが
出す順番についても、やはり臨機応変に。
下座の自分から見て、奥のほうに置くものから手にとります。
いわゆる 「袖越し」 にならないようにすればいいわけです。
自分のいる位置が、お客さまの右側ならば
先にお菓子を、それからお茶を
お客さまの左側にいるなら
先にお茶を、それからお菓子を
奥のものから先に出すようにすればスムーズですし
お出ししたものに自分の袖を触れるような粗相も防げますね。
※ 参考文献
『なぜそうするのかがわかる 心に響く大人の新常識』
近藤 珠實 監修 (オレンジページムック)
もうすぐ年の瀬。
お歳暮に、クリスマスに …
贈り、贈られることが多い季節です。
自分が手土産を選んだり、渡したりするときには
とかくマナーが気になりますが
では、贈られる側になったら、いかがでしょう。
いただく際のマナー、意外と盲点が多いものです。
お品は両手でいただく、とか
「ありがとう」 など感謝のことばを添える、とか
そうした基本のきは、いうまでもありませんね。
そのあとです。
その手土産をどう扱ってくれるかを
贈った側はけっこう見ているものなのです。
日本経済新聞 の11月14日付土曜版掲載
「暮らしのワンポイント」 のコーナーに紹介された
「訪問時の手土産」 のマナーによると。
まず、部屋にお通ししたお客さまから
手土産をいただいたら
「和室なら床の間、洋室なら飾り棚の上など
一段高いところに置く」
のがよいそうですよ。
ただし、床の間や飾り棚がない部屋もあります。
そういった場合は、自分の上座に置きましょう。
えっ、上座はどっち? … なんてことにならないように
客間等の、お客さまをお通しする部屋については
ドアの位置などからみてどちらが上座になるか
あらかじめ把握しておくことも必要ですね。
ちなみに、冷蔵・冷凍したほうがよいものなど
いただきものの中身によっては臨機応変に
受け取り次第、キッチンにうつすなどしてください。
日保ちしないお菓子ならば
「お持たせで失礼ですが」 とお断りしたうえで
すぐにお皿にうつし、ご一緒にいただくのもいいですね。
ところでもうひとつ、上記の記事でドキッとしたのが
いただきものを
「そのままにすると失礼で、
お茶を入れ替えるなど
中座するタイミングをつくって奥に下げる」
ほうがよい、という記述。
たしかに、贈りものには贈った人の魂が宿る、といいますか
心をつくして選んだ品が置きっぱなしだったら
贈った人を切ない気持ちにさせるかもしれません。
さらには、お客さまのお茶碗があいても、お茶が冷めても
話に花が咲いてそのまま、なんてことにならぬよう
さりげなく振る舞えると格好いいですね。